熊本地域の東に位置する阿蘇山は、約27万年前から約9万年前にかけて4度にわたる大火砕流噴火を起こしました。この火砕流堆積物が100m以上も厚く降り積もって熊本の大地はできあがりました。この大地の地層はすきまに富み、水が浸透しやすい特徴を持っているので、熊本地域に降った雨は地下水になりやすく、地下に豊富で良質な水が蓄えられます。
そして、約400年前、加藤清正公は白川の中流域などに多くの堰(せき)と用水路を築き水田を開きました。特に白川中流域の水田は通常の5倍~10倍も水が浸透します。水が浸透しやすい性質の土地に水田を開いていったので、大量の水が地下に浸透し、ますます地下水が豊富になりました。
まさに、熊本地域は約1,000㎢の水循環で育まれる地下水によって結ばれた「地下水共有圏」です。
熊本地域とは
熊本市、菊池市(旧泗水町・旧旭志村)、宇土市、合志市、大津町、菊陽町、西原村、御船町、嘉島町、益城町、甲佐町からなる11市町村
地下水の量
熊本地域の地下水は、私たちの大切な生活用水ですが、この地下水を育む水田や畑などが社会環境の変化によって減少しており、つくられる地下水の量も減ってきています。
田畑や森林などの水が浸透しやすい土地のことを「かん養域」、宅地や市街地などの水が浸透しにくい土地のことを「非かん養域」といいます。この「非かん養域」が広がることは、地下水が減っていくことにつながります。
地下水の質
熊本地域の地下水の水質は、全体としては良好な状態に保たれていますが、一部地域では地下水質の悪化も見られています。悪化の主な原因は、工場などで使用される薬剤や油の漏洩によるもの、農地での過剰な施肥や家畜排せつ物の畑地への過剰投入によるもの、その他自然的要因によるものなどです。
地下水の流動はとても緩やかなため、一度汚染されるとその回復には長い時間と膨大な費用を要します。
従って、地下水の水質の保全には、汚染物質を地下に浸透させないという未然防止対策が最も大切です。
一部の地域では
硝酸性窒素濃度の上昇がみられます。
硝酸性窒素は主に肥料・家畜排せつ物、生活排水に含まれる窒素が、土壌微生物等による作用を受け発生します。硝酸性窒素は土壌に吸着されにくいため、植物吸収や脱窒等されなかった分が地下へ移行します。
硝酸性窒素を一定量以上含む水を摂取すると、乳児を中心に血液の酸素運搬能力が失われ酸欠になる疾患(メトヘモグロビン血症)を引き起こす原因となります。